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会の設立動機と目的について

波多野暁生です。

「危険運転致死傷罪の条文見直しを求める会」を設立するに至った動機と目的について、ご説明したいと思います。



【私の体験が原点】

私は、2020年3月14日に東京都葛飾区四つ木5丁目交差点で発生した赤信号無視事件の被害者遺族であり被害者です。


事件の概要は下記の産経新聞2021.11.21 朝刊掲載の図にある通りです。




一人娘の耀子は死亡し、私は重症を負いました。


~事実のダイジェスト~

① 所轄の葛飾警察は危険運転での送検を視野に捜査を進めましたが、最終的には過失運転致死傷罪で送検しました。(過失での送検が検察の総意であると東京地検交通部が言ったそうです。


② 私は納得が出来るはずも無く、自身で法律を調べ、裁判例を調べ、検察に意見できる弁護士を探しました。


(精読した判決文は下記の3つです)

・最高裁平成20年10月16日 ・高松高判平成18年10月24日 ・東京高判平成26年3月26日


③ 弁護士と面談した副検事は上記の裁判例を全く参酌しておらず、停止線の前で停止できない距離で赤に気が付いた場合、危険運転の適用は無理と誤認していたそうです。(知識がなく、調べる事もしていなかったそうです。)


④ 人事異動で担当が副検事から正検事に変わり事件発生から1年を経てようやく危険運転致死傷罪で起訴がされました。

※弁護士から検察に提出した書面は上申書1つ意見書2つの計3つ


⑤ 2022年3月22日に東京地裁で危険運転致傷罪が認められ懲役6年6ヵ月の判決となりました。

(法定刑は20年以下の懲役であるのに対し、求刑は7年6ヵ月でした。)



【私が考える問題の所在】


私どもの事件では、加害者はドライブレコーダーを積んでおり、車の走行位置と信号表示について客観的な状況を示す映像がありました。

また、加害者は赤信号を無視して交差点に進入する明確な動機があり、事件発生から11日後に行われた実況見分において、停止線前28m付近で赤信号を認識していたと明確に供述していました。


しかし、東京地検交通部は本件を過失犯、つまり、うっかり信号を無視して歩行者に衝突してしまった罪で処理しようとしていました。

上記ダイジェストにも記載しました通り、様々な働きかけをした結果、東京地検交通部は知恵を絞り直して危険運転致死傷罪の起訴をしました。

結果、裁判でも危険運転致死傷罪を認める判決が出ました。


しかし、被害者がここまでエネルギーを使わないと、私どもの事件の様な、常識的に明らかに危険な運転でも、漫然と過失運転致死傷罪で処理されてしまう現実が潜在的に多く放置されているのではないかと考えています。


その問題の根本的な理由は、大きく2点あるのではないかと考えています。


理由① 危険運転致死傷罪を規定する条文の表現が曖昧なため、故意の立証が難しい

理由② 危険運転致死傷罪をどの様に解釈して取締り(故意の立証)を行うかの実務(警察・検察)の知見共有が不足している。


これらが複雑に絡み合う事により、およそ一般常識では考えられない様な軽い処罰が繰り返されてきたであろうことを思わずにはいられません。


【会を設立する動機】


上記の体験とその体験の中で感じた問題意識をもってすれば、この現実を座視する事はできません。

それが、生き残った私が残りの人生をかけて、突然に命を奪われた娘と共に生きるということだと考えるからです。


【会の目的】


危険運転致死傷罪については、自動車運転死傷行為処罰法の第2条と第3条にその定めがあります。

赤信号無視以外にも、飲酒運転、危険ドラッグ等の薬物運転、法定速度を大幅に上回る超高速度運転、妨害あおり運転等について、取締りの規定を定めています。


この条文の表現について、法律創設(2001年)から20年超の間に、多くの被害者遺族から、表現が不明確であるために、常識的かつ外形的に明らかに危険な運転であっても危険運転致死傷罪の適用が無いと言う声がありました。


条文上の不明確な表現は、例えば下記の様な表現です。


「正常な運転が困難な状態」「進行を制御することが困難な高速度」「赤信号を殊更に無視」等の表現の意味する所が不明確です。


一見すると、それらしい書きぶりにはなっていますが、司法の判断を仰ぐ際には不明確が故に、下記の様な言い逃れが出来てしまいます。


・酒は飲んでいたが車は正常に運転出来ていた

・スピードは出していたが車は制御出来ていた

・赤信号は見落としただけだ


こうした逃げ口上が裁判で通用してしまう現実があります。


被告弁護人もその様に主張する事で加害者を守ろうとします。(それが仕事だからです。)


過去の被害者の方の声には例えば下記の様な資料があります。



平成24年11月30日開催の法制審議会-刑事法(自動車運転に係る死傷事犯関係)部会資料より



しかし、実際には今現在も法2条の条文表現の改正は行われていません。


結果、法が創設された時の立法趣旨である「交通事故は過失犯として裁くのが基本だが、単なる不注意とは言えないケースもある。他人の安全に無関心、無配慮な行為で人を死傷させた場合、故意犯に準じて処罰すべきだ」という狙いが十分に効果を発揮していない現状を是正する必要があるのではないかと考えます。


そこで、条文の表現をより明確にする法改正が必要であると、国に訴えることが当会の目的です。


【さいごに】


法律を改正したからと言って、直ちに悪質な事故が無くなるとは思いません。

どの様に改正がされたところで、警察官と検察官が法律の狙いを的確に理解し、適正な運用をしない限りは、法律はその力を発揮しないと考えています。

ですから、法改正だけをすれば万事問題が解決するとは考えていません。

また、法改正は被害者の意見のみではなく、様々な意見を取り込んだ上で議論されるのが現実でしょう。


法改正を望む方の問題意識や動機は様々だと思います。

私が出来る事、当会が出来る事は、自身が体験した事とその後に見聞きして考えた事に基づいて改善を求める以上でも以下でもありません。


ただ、法改正を望む方が、その望みを国に届ける事ができる公式の場が設けられる様に、法務省に法制審議会を出来る限り早く開いて頂きたいと、働きかける事は出来るかもしれないと考えています。


いずれにしても現状のままではダメだと思っています。


長文をここまでお読み頂きありがとうございました。

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