今年の4月に交通安全議員連盟に提出した、城祐一郎先生の改正案です。
元検事の視点からの改正案なので、現場実務家の運用のし易さを考えると、今の所一番実務的な改正案なのでは無いかと思います。
重大な交通の危険を生じさせる速度は、例えば赤信号無視であれば、時速20㎞程度であれば成立すると言う裁判所の判断があり、これが基準の一つとなると思われます。(波多野私見)
令和5年4月7日
昭和大学医学部法医学講座教授
城 祐一郎
危険運転致死傷罪の改正私案
自動車運転死傷処罰法2条2号の次に,3号として次の条文を追加する。
三 重大な交通の危険を生じさせる高速度で自動車を運転する行為
提案理由
高速度運転による重大な死傷事故が頻発している現状に照らせば,高速度を原因とする危険運転致死傷罪の類型が必要とされていることは明らかである。にもかかわらず,高速度を原因とする類型は,本法2条2号の「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」しか存しない。しかも,同号は,「進行を制御することが困難」という要件が付された高速度運転しか対象としないため,無謀な速度で運転しながらも,同号の要件を満たさないという事案が多発している。
このような現状に鑑みれば,高速度一般を対象とする危険運転致死傷罪の類型の創設が不可欠であると考えられる。ただ,どのような高速度の場合をその対象とするかは問題であるところ,すでに本法で用いられている概念である「重大な交通の危険を生じさせる速度」という概念を基にして,これを「重大な交通の危険を生じさせる高速度」を対象とすることで,高速度運転に対する危険運転致死傷罪の類型を創設するのが可能ではないかと思われる。
その際,どの程度の高速度を対象とするかなどは,道路の状況や他の車両等の走行状況,歩行者の状況等も諸々の条件を加味した上での解釈により,具体的な裁判において一定の基準が創設されるものと考える次第である。
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